わたしだけのための、森のお祭り

 

前にここに帰ってきてから幾月もたった。

人の汚れにまみれ、たくさん心が騒がしくなって、膝を抱えて動かせないくらいに疲れてしまった。

これ以上、私の心に人の心が入り込む隙間なんてない。

 

いつものように、この森の、この場所で、炎の先に頬を焦がされながら、光の真ん中の一点を見つめている。

質量のない熱いものが胸に溶け込んできて、血を送る臓器に溜まった鉛を溶かして流す。

 

軽い。ここの空気はとりわけ軽い。

体が浮いてしまいそうなくらいに、綺麗で澄んだ空気に満ちている。

好きだ。私はこの場所がたまらなく好きだ。

 

ここは自宅から60マイル離れた山の中腹にある滝のそば。

背の低い植物と、それにくっつく昆虫、小さな四足動物と小鳥がいる。

まずはじめに座る場所を決める。

枯れ葉を集めて、ちょうどいい高さの平らな岩の上に敷いてクッションを作る。

残った葉と小枝を山にして、マッチで火をつける。

パチパチと空気が弾けて、森が燃えていく。

こころが踊っている。

これから私のための、森の大祭りが始まるのだから。

 

貸切の森の灯りが強まるほどに、周囲の木々に落ちた闇が深くなる。

炎の声が大きくなって、遠くの森の静けさが一層不気味に感じる。

背中がぞわぞわと震えて、私はただひとり、この森でただひとりの人間だと……そう、感じて恐ろしい。

 

ここにはマッチとナイフ以外は持ち込んではいけない。

水はそばに流れている。

日の出まで炎で目を焦がしたら、まっすぐに向かう。

あの華やかで汚い。息苦しい場所へ。

 

ここにいる時間は短いけれど、ここが唯一、私の帰ってくる場所なんだ。

一度離れると、また戻ってくるまで、あるのだか、ないのだかもわからなくなってしまうけれど……。

夢のような場所。

「ある」と言いたくて、それを確かめたくて、何度もなんども、わたしはここへ帰ってくるんだ。

 

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